2022年4月3日日曜日

ヴィンテージリーバイスの生地のオンスの変遷

1 はじめに

 リーバイス501の生地のオンス数(重さ≒厚さ)については、1930年代前の"FOR OVER 50 YEARS"のギャランティーチケットまでは9オンス、1930年以後の"FOR OVER 60 YEARS"のギャランティーチケットからは10オンスと、それぞれギャランティーチケットに明記されており、片面タブ期の"FOR OVER 80 YEARS"のギャランティーチケットまでは10オンスの記載が続きました。その後の"FOR OVER 85 YEARS"のギャランティーチケットからは10オンスの記載がなくなりましたが、しばらくの間は生地のオンス数に変更はなく10オンスの生地が用いられ、後にオンス数の引上げが行われた、というのが一般的な理解ではないかと思われます。例えば、1960年代前半のものと思われるプリシュランクの生地のLEVI'S 554ZXXでは、フラッシャーに14オンスと明記されています。仮にこれが縮む生地で、縮率が10%とすると縮み前のオンスは11.34オンスと計算され、生地のオンス数は10オンスから引き上げられていることになります。

 ただ、「いつごろから」「どの程度まで」生地が重くなった・厚くなったということは、はっきりと語られることは少ないように思います。

 そこで、今回は、同じサイズのデッドストックを計測・比較して、リーバイス501の生地のオンスがいつ頃から変化しているのか、調べていきたいと思います。


2 対象とするジーンズ

 今回は、ウエスト27インチ・レングス34インチのもの6本と、ウエスト27インチ・レングス32インチのもの6本の計12本の重さと厚さを計測します。具体的には、以下のとおりで、古いと考えられるものから並べています。番号の後に★が付いているものはレングス34インチ、☆が付いているものはレングス32インチです。おおよそ1950年代前中期から1980年代前半までの30年間の生地を比較することになります。一部フラッシャーやギャランティーチケットが欠品しているものがありますが、微小な差かと思われるため、ここではその差は無視することにします。


(1) 革パッチの504ZXX(サイドステッチが長い)★
(2) 革パッチの504ZXX(サイドステッチが短い)★
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX(オイルドクロスのギャランティーチケット)★
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX(紙のギャランティーチケット)☆
(7) 501 BIG E ウエストチェーン(タイプもの)☆
(8) 501 BIG E ウエストチェーン(大文字 501)☆
(10) 501 66後期★ ※ホームページ未公開
(11) 501 クロカン(1982年2月製)★
(12) 501 クロカン(1982年11月製)★

レングス34インチの6本

レングス32インチの6本

 レングス34インチ・32インチの各6本をそれぞれ並べてみましたが、レングスのサイズの個体差は、さほど感じられないのがお分かりいただけると思います。


3 重さの計測

 それでは、実際に12本のジーンズの重さを計測していきます。まず、レングス34インチのもの(上掲の★印)の6本から。


(1) 革パッチの504ZXX 704g

(2) 革パッチの504ZXX 671g

(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX 677g

(10) 501 66後期 655g

(11) 501 クロカン 658g

(12) 501 クロカン 666g

 次に、レングス32インチのもの(上掲の☆印)の6本を。


(9) 501 66前期 636g


 以上の結果をまとめると次のようになります。


27/34  27/32
(1) 革パッチの504ZXX  704g
(2) 革パッチの504ZXX  671g
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX  677g
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX   652g
(5) ギャラ無し紙パッチの503BXX   632g
(6) 501 BIG E ウエストシングル     619g
(7) 501 BIG E ウエストチェーン   649g
(8) 501 BIG E ウエストチェーン      635g
(9) 501 66前期   636g
(10) 501 66後期  655g
(11) 501 クロカン  658g
(12) 501 クロカン  666g

 レングス34のものと32のものは、同じ尺度で比較したいところです。そこで、同じギャラ入り紙パッチの504ZXXである(3)と(4)は同じ時代の生地が用いられていると仮定してこれらを100とし、レングス34インチのものは(3)と、レングス32のものは(4)と対比して数値化してみます。その結果は、次のようになります。

(1) 革パッチの504ZXX       104.0
(2) 革パッチの504ZXX        99.1
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX   100
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX   100
(5) ギャラ無し紙パッチの503BXX   96.9
(6) 501 BIG E ウエストシングル   94.9
(7) 501 BIG E ウエストチェーン   99.5
(8) 501 BIG E ウエストチェーン   97.4
(9) 501 66前期           97.5
(10) 501 66後期           96.8
(11) 501 クロカン           97.2
(12) 501 クロカン           98.4

 以上を見てみると、重さについては、生地のオンス数が上がり重くなったという傾向は見られません。むしろ、全体としては、古い時代のものの方がやや重い傾向にあります。これは、古いものの方が太めのシルエットであるため使用している生地が多いと理解が適当かと思います。


4 厚さの計測

 次に厚さの計測をしていきます。計測は、以前に大戦モデルの厚さを計測したときと同様に、電子ノギスを使用してウエストベルトの5ヶ所(左右前、左右横、真後ろ)を計測し、その平均値をとることにします。

                                                  右前    左前   右横    左横    後ろ  平均値
(1) 革パッチの504ZXX       1.14   1.03   1.01   1.04   1.03  1.05  
(2) 革パッチの504ZXX       1.04   1.02   0.99   1.10   1.02  1.034
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX  0.95   1.03   1.06   0.96   1.01  1.002 
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX  0.99   0.96   0.94   1.00   1.01  0.98   
(5) ギャラ無し紙パッチの503BXX  1.04   1.05   1.03   0.96   1.00  1.016  
(6) 501 BIG E ウエストシングル    1.07   0.99   1.08   0.99   1.01  1.028 
(7) 501 BIG E ウエストチェーン    1.01   0.97   1.02   1.09   1.01  1.02
(8) 501 BIG E ウエストチェーン    0.98   0.96   1.04   1.03   1.00  1.002
(9) 501 66前期            0.99   0.92   0.90   0.89   0.94  0.928
(10) 501 66後期          0.91   0.95   0.95   0.90   0.87  0.916
(11) 501 クロカン          0.91   0.96   0.92   0.91   0.96  0.932
(12) 501 クロカン          0.95   0.93   0.95   0.98   0.91  0.944
                                  (単位mm)

 平均値を見ると、最大で0.916~1.05、約10%の差が見られますが、年代が進むに連れて厚くなるのではなく、(9)の66前期以降は1mmを超えるものがなくなるなど、むしろ薄くなっていく傾向が見られます。年代が進むに連れて、糸や織りのムラが小さくなったことが影響しているのかもしれません。


5 まとめ

 重さと厚さの両面から検証していきましたが、1950年代前中期から1980年代前半までの30年間では、XXからBIG Eの移行期も、リング糸から空紡糸に変わった時期も、革新織機に変わり生地の耳がなくなった時期も、少なくとも生地の重さ・厚さに関する仕様は変わっていないと考えられます(年代が立つに連れ、重さも厚さも数字が小さくなるのは、前述のとおり、製品のシルエットの変更や生地の均質化が影響していると思われます。)。

 以前ブロクでとりあげた大戦モデルの生地の比較については、元々、世間で言われる「大戦モデル=ヘビーオンス」という見方に否定的でしたので、予想どおりの(あるいは予想以上の)結果が出たという感想でした。しかし、今回は、前述のとおりプリシュランク生地の製品のフラッシャーに"14oz"と明記されていることもあり、501の生地も1960年代辺りから変化が出てくるだろうと予想していたので、今回の結果は個人的には意外でした。

 今回の結果との整合的に理解しようとすると、そもそもオンス数の表記がいい加減なものだったか、オンスという単位そのものに何らかの変更があったとしか考えられないのですが、どちらもそれを証明するような証拠を見つけているわけではありません。

 ただ、いずれにしろ生地自体の重さ・厚さは変わっていなことは間違いありません。XXの生地は薄くてペラペラしているといったことが言われることもありますが、数字で見る限りはそんな事は言えず、最初に述べたような一般的な理解からくるバイアスがかかったものと言えるでしょう。何事にも検証が必要ということを改めて実感しました。

2021年12月13日月曜日

JELADO 301XX、WAREHOUSE DEAD STOCK BLUE 1000XXをヴィンテージと比較してみる (その5 WAREHOUSE 1000XX)

   前回は、Dead Stock Blue 生地を使用したウエアハウス 1000XXをシルエットと生地の2点から見ていきました。今回は、3ヶ月着用後の状況をご紹介していきたいと思います。ノリ落としのためのファーストウォッシュ後、自宅のガス乾燥機で乾かし、今回の投稿の前にセカンドウォッシュをしています。洗剤は、2回の洗濯ともBEYONDDEXXを用いています。


 まずは、全体の写真から。





 3ヶ月間、ほぼ毎日履いていました。色落ちはまだ目立つほどまでは至っていませんが、アタリはしっかり付いています。




 さすがレプリカだけあって、まだ色落ちは目立たない程度でもアタリは付きやすく、ヒゲとハチノスはそれなりに見えるようになっています。


 次に、WAREHOUSE 1000XXがモチーフにしたヴィンテージの46モデルと比較してみます。ちょうど同じ程度の46モデルの503BXXがありますので、これを比較対象とします。



 
 色落ちの程度は、完全に揃えることはできませんが、写真で見る限りはかなり近いと見て取れると思います。その上でコメントすると、前回のブログで述べたように、ウエアハウス 1000XXは、「デットストックブルー」と称する生地だけあってデッドストックの段階ではヴィンテージのデッドストックにかなり近い色合いだったのですが、セカンドウォッシュの時点で、色合いがヴィンテージとは結構異なってしまったように思われます。具体的には、ヴィンテージの方が、青みが深く、その中にも若干の赤みが見えるのに対して、ウエアハウス 1000XXは、青みがやや表面的な上、赤みが感じられません。
 色落ちに関しては、セカンドウォッシュなのでまだなんとも言えませんが、多少色が落ちている箇所を見る限りは、ヴィンテージに近い色落ちを期待できるように見えます。
 生地の質感については、ウエアハウス 1000XXは、糊のついた状態では、すこしスラブ感がわざとらしいかと思いましたが、セカンドウォッシュの時点では、ヴィンテージのスラブ感に近いものがあると感じました。他方で、ヴィンテージリーバイスの生地は、柔らかさやしなやかさの中にもネバりやコシが感じられるのに対して、ウエアハウス 1000XXは、しなやかさに欠け、誤解を恐れず言えば、古くなった厚紙のような素材感です。いくら"ヴィンテージレプリカ"と言えども、ヴィンテージデニムとレプリカデニムでは方向性が大きく異なるところですので当然の違いといえばそれまでかもしれません。ただ、個人的には、前述のヴィンテージリーバイスの素材感は着用時の見た目や穿きやすさに大きく影響するところと考えているので、ヴィンテージの再現を謳うブランドの商品ということを踏まえれば、とても残念に感じました。
 ファーストウォッシュ+乾燥機+セカンドウォッシュでの縮みによるサイズ変化は、次のとおりとなりました(ウエストは表記28インチ)。ワンウォッシュ後に裾上げをしているため、股下と総丈は記載していません。
 
        縮み前   縮み後
ウエスト    78cm   74cm
ヒップ     105cm  101cm
前股上    30.5cm  28.5cm
後股上       40cm  38.5cm
ワタリ    28.5cm   27cm

 個人的には「仏作って魂入れず」といった印象を持ってしまい残念な出来でしたが、多くのファンを抱えているブランドの商品だけあって、ブランドのファンが好みそうなディテールや質感は、しっかりと押さえた一本なのかもしれません。ヴィンテージジーンズとレプリカとの違いを改めて感じさせる経験でした。

2021年8月26日木曜日

JELADO 301XX、WAREHOUSE DEAD STOCK BLUE 1000XXをヴィンテージと比較してみる (その4 WAREHOUSE 1000XX)

  2回にわたってヴィンテージリーバイスとの比較という観点から、ジェラード 301XXについて取り上げてきましたが、今回からは、ほぼ同時期に発売されたウエアハウス 1000XXについて取り上げていきます。このウエアハウス 1000XXは、デッドストック状態での経年変化を再現したというDead Stock Blueと称される新しい生地を使用したことをセールスポイントにしている。ここでは、ジェラード 301XXのときと同様にシルエットと生地を中心に見ていきたいと思います。ディテールについては、ホームページ(ウエアハウス 1000XX)で取り上げていますので、そちらをご覧いただければと思います。ちなみに、この記事の大部分は、2021年の1月中に書き上げていたもので、記事の公開時点では、既に3か月ほど穿いてセカンドウォッシュも済ませていますが、ここでは書き上げた当時の内容のまま公開して、セカンドウォッシュ後の感想は、次回に改めて記事にしたいと思います。

1 生地の比較

 ウエアハウス 1000XXは、1946年モデルという大戦モデル直後の片面タブモデルをモチーフにしており、本来は、同時期のデッドストックのヴィンテージリーバイスを比較対象としたいところですが、残念ながらデッドストックは保有していないので、ジェラード 301XXのときと同じく、1953~4年頃の製造と思われるレザーパッチのリーバイス 504ZXXのデッドストックと、1955年頃の製造と思われるリーバイス 504ZXXのデッドストックを比較対象とします。ちなみに、8~9割ぐらいの色残りの大戦直後と思われるリーバイス 503BXXであれば保有しているので、次回の記事でこれと比較をしてみようかと思います。


 ウエアハウス 1000XXとヴィンテージリーバイス2本を並べてみた写真です
 先ほど比較対象としては適当ではないと述べたのですが、色味は、ウエアハウス 1000XXとレザーパッチのリーバイス 504ZXXは、似通っています。ヴィンテージの方がやや青みが強く、ウエアハウス 1000XXの方はグレーがかった色合いですが、あえて言えばという程度の違いです。ウエアハウス 1000XXは、若干色の濃さを強調しているかなという程度です。

 スラブ感については、かなり強めに感じます。他方で、ネップはあまり見られません。

 生地の質感については、ヴィンテージと比べると、相当異なり、織りが甘いなど、かなり疎になっているように感じます。こんなことをするのは私だけかもしれませんが、生地に口を当てて息を吐き出したとき、ヴィンテージデニムでは、呼気があまり生地を伝わらず、横にも漏れていくのですが、ウエアハウス 1000XXでは呼気が生地の間を抜けていくのがよく分かります。ヴィンテージリーバイスの質感ともかなり異なりますし、他のヴィンテージレプリカにもこうした質感のものは、あまり見かけないように思います。色落ちなどでのこだわりを出すための仕様かもしれませんが、「ヴィンテージ古着の忠実な復刻」を謳うブランドとしてこの質感は果たしてどうなのだろうかと疑問を持ちました。

2 シルエットの比較

 次に、ウエアハウス 1000XXのシルエットをヴィンテージリーバイスと比較してみます。







 ウエアハウス 1000XXとリーバイス504ZXXは、ほぼ同一のシルエットと言って良いかと思います。デッドストックをそのままトレースしたのかと思わせるほどです。あえて言えば、若干裾先に向かってウエアハウス 1000XXはテーパードがかかっていると言えますが、個体差の範囲内と言っても良い程度です。



 他方で、股上の深さは、ヴィンテージリーバイスとはかなり異なってります。ジェラード301XXも同様だったのですが、ウエストベルト1本分、ウエアハウス1000XXは股上が深くなっています。


 最後に、ジェラード301XXは、ヴィンテージリーバイスと比べてバックポケットの付く位置が異なっていましたが、ウエアハウス1000XXは、あまり変わらないようです。

3 まとめ

 以上のように糊を落としていない未着用の状態でのウエアハウス1000XXについて見ていきました。一言で言えば、シルエットに関しては、ヴィンテージリーバイスとかなり近いものになっている一方で、生地の素材感については、ヴィンテージとはかなり違うものになっているなというのが、私の印象です。先に述べたように、3か月してセカンドウォッシュした後の様子について、次回の記事にまとめる予定です。

2021年2月14日日曜日

JELADO 301XX、WAREHOUSE DEAD STOCK BLUE 1000XXをヴィンテージと比較してみる (その3 JELADO 301XX)

  前回は、2020年秋に発売されたジェラード 301XXをシルエットと生地の2点から見ていきました。その投稿の前から穿き込んで来ましたが、約3ヶ月ほどが経過しましたので、現状をご紹介していきたいと思います。サイズがやや大きかったため、ノリ落としのためのファーストウォッシュ後、自宅のガス乾燥機で乾かしています。また、この写真を撮る前にセカンドウォッシュをしています。洗剤は、2回の洗濯ともBEYONDDEXXを用いました。


 まずは、全体の写真から。

全体

うっすらと見えるヒゲ

同じくうっすらと見えるハチノス

 ほぼ毎日履いていましたが、所詮3ヶ月しか経過していないため、あまり目立った色落ちはしておらず、ヒザ頭の部分がほんの少し色落ちして、うっすらとヒゲとハチノスが付いている程度です。最初の2ヶ月まではほとんどヒゲ・ハチノスは見えませんでしたが、その後、急激にアタリが目立ち始めました。おそらく色落ちが激しくなるちょうど前ぐらいの頃合いかと思います。

 色落ちの度合いや違うのですが、ジェラード301XXの生地とデッドストックから穿き込んだギャラ入り紙パッチの生地、ユースドで購入したギャラなし紙パッチの生地を比較した写真です。

ジェラード301XXの生地の拡大写真


ギャラ入り紙パッチ期の生地の拡大写真

ギャラなし紙パッチ期の生地の拡大写真

 ジェラード301XXは色落ちが十分でないため確たることは言えないのですが、今の状態では点落ち・粒落ちよりも、縦落ちが目立つように窺えます。
 発色については、写真ではうまく表せなかったのですが、実物はかなり赤みの強くなっています。これは、糊を落とす前から見られましたが、色落ちしてよりその傾向が強くなったように感じられます。
 前回のブログでは、生地の色について
ギャラ無しのXXやBIG Eに見られるよなう色合いに近いと思われ、むしろレプリカらしさに乏しいかな?という印象を受けました。
と述べましたが、現段階では、生地の色合いだけでなく色落ちの様子についても、ジェラード301XXがターゲットにした年代(1950年代はじめから半ばまで)よりも新しい1960年代の生地に近いように感じられます。また、他のレプリカブランドのものに比べると、スラブ感が誇張されておらず、地味に映ってしまいます。レプリカジーンズのファンには、強いスラブ感を求める人が多いと思いますが、そういう方には物足りなく感じられるでしょう。
 前回のブログでも述べましたが、特筆すべきは生地の質感で、柔らかくしなやかな風合いでありながらもコシがあり、穿き進めていくにつれてヴィンテージに近いという印象がますます強くなりました。この点は、他のレプリカブランドではなかなか見られない特徴であり、セールスポイントかと思います。
 ちなみに、ファーストウォッシュ+乾燥機+セカンドウォッシュでの縮みによるサイズ変化は、次のとおりとなりました(ウエストは表記28インチ)。
 
        縮み前   縮み後
ウエスト    76cm   69cm
ヒップ     101cm   99cm
前股上    32.5cm   31cm
後股上      42.5cm  39.5cm
ワタリ     29cm   27cm
股下      90cm  82.5cm
総丈     122.5cm  112.5cm

 これからももう少し色落ちをさせて生地の真価を見ていきたいところです。だいぶアタリが出てきました。3か月といえども洗わずに穿き続けるというのは、衛生面の問題もさることながら苦行でもあるので、これからは洗濯の頻度を上げてきれいめに穿いていこうかと思います。
 とはいえ、プログでは、ウエアハウスの1000XXも取り上げていますので、その穿き込みもしなければならないのですが、しばらくは、同時並行で色落ちの具合を見ていきたいと思います。

2020年11月14日土曜日

JELADO 301XX、WAREHOUSE DEAD STOCK BLUE 1000XXをヴィンテージと比較してみる (その2 JELADO 301XX)

  前回は、最近発売されたヴィンテージ再現系のレプリカジーンズをジェラード 301XXとウエアハウス 1000XX(dead stock blue)について、ヴィンテージリーバイスとの比較という観点から、概観しましたが、今回は、ジェラード 301XXについて、シルエットと生地の2点をもう少し深く見ていきたいと思います。ちなみにディテールについては、ホームページ(ジェラード 301XX)で取り上げていますので、そちらをご覧いただければと思います。

1 生地の比較

 生地の比較は、1953~4年頃の製造と思われるレザーパッチのリーバイス 504ZXXと、1955年頃の製造と思われるリーバイスLEVI'S 504ZXXとを比較対象として見ていきます。Jジェラード 301XXとヴィンテージの2本はいずれも糊を落としていない状態です。なお、色味、色落ち、質感といった要素は、ある程度履き込んでからでないときちんと判断できないことを承知の上での検証です。


 JELADO 301XXとヴィンテージリーバイス2本を並べてみた写真です。写真で見ても分かるとおり、ヴィンテージリーバイス2本の間でも色の差があって、レザーパッチの方が色が深くて青みが強く、紙パッチの方はより色が乾いた感じになっています。

 色味については、JELADO 301XXは、比較したヴィンテージリーバイスと比べると赤みが強いという点で異なっています。しかし、ヴィンテージ感に乏しいという訳ではなく、ほんの少し穿き込んだギャラ無しのXXやBIG Eに見られるよなう色合いに近いと思われ、むしろレプリカらしさに乏しいかな?という印象を受けました。
 また、色の深みは、あまり強くは感じません。ただ、レプリカの中には、いたずらに色を濃くした結果、履き込んだ後の色合いにも影響して、いかにもレプリカの色になってしまうものもままあります。JELADO 301XXについては、そういった心配は要らないかもしれません。

 スラブ感については、極端なザラつきではなく、実際のヴィンテージのスラブ感に近いといってよいと思います。ただ、この点は、見た目は淡白に映るので、多くのレプリカのファンには物足く感じられるように思います。ネップは、生地表面からも裏面からも散見されますが、ネップ感を強調するということもありません。

 生地の質感については、スラブ感があまり強くないことに窺われるように、織りを甘くしたような様子はありません。また、公式の情報では、JELADO 301XXでは経糸に超長綿を使用しているとのことですが、これは生地の触感・しなやかさに現れており、糊付きの状態でも固い印象は受けません。質感については、ヴィンテージに非常に近い印象を受け、感心しました。生地の質感は、実際のヴィンテージ感を出すために重要だと思いますが、糊を落として穿き込んでどうなるのか楽しみです。

2 シルエットの比較

 次に、JELADO 301XXのシルエットをヴィンテージリーバイスと比較してみます。

左がレザーパッチのリーバイス504ZXX、右がジェラード 301XX

上がリーバイス504ZXX、下がジェラード301XX

【腿の部分】上がリーバイス504ZXX、下がジェラード301XX

【裾の部分】上がリーバイス504ZXX、下がジェラード301XX

 リーバイス504ZXXは股の部分からカーブを描いて細くなり、その後裾に向かって真っ直ぐに落ちていくのですが、ジェラード301XXは股の部分からもも裾に向かって緩やかにテーパードしていき、裾幅はほぼ同じになっており、独特なシルエットになっています。ももの部分が太く感じられるようになっているのが特徴的です。


 また、股上の深さもヴィンテージリーバイスとはかなり異なっています。上の写真は、後ろのシームで合わせて両者を対称的に並べた写真ですが、ウエストベルト1本分、ジェラード301XXが股上が深くなっています。実際に穿いてみると、リーバイス501よりも701に近いという印象を受けます。かなり大きな差になるので、好みが分かれるところであると思います。


 最後に、シルエットそのものではないのですが、バックポケットの付き方もかなり違います。上の写真左のリーバイス504ZXXはバックポケットはバックヨークにほぼ平行に付いているのですが、写真右のジェラード301XXはバックポケットとバックヨークとの間にかなり角度があります。これは、なぜか左ポケットのみで、右ポケットはさほど角度が付いていません。また、ポケット自体も右上がやや尖ったような形になっています。

3 まとめ

 実は、このブログを書いている今、ジェラード301XXを穿いてから約2週間程度経過したところですので、その感想も踏まえてまとめていきたいと思います。
 まず、生地については、レプリカジーンズを好む人にはスラブ感などで物足りないと受け取られるかもしれません。しかし、ヴィンテージを再現したという触れ込みのとおりのもので、スラブ感、色、生地の柔らかさ、ハリ、コシなど、いずれも好印象です。肌に触れたときの着心地は、ビンテージのそれにとても近く感じられます。
 次に、シルエットについては、リーバイス501を再現したジーンズを穿いているという感じは乏しいです。1950年代のファッションを意識しているものだと思いますが、股上が深い点や、一般的なストレートジーンズではなくチノパンのように裾に向かって緩やかにテーパードするシルエットなど、好みが分かれるように思います。
 ヴィンテージデニムが好きな私からしても、もう少し穿いていき、生地がどういった表情を見せてくれるのか楽しみになっています。より色落ちが進んだときには、改めてブログにまとめたいと思います。

2020年10月31日土曜日

JELADO 301XX、WAREHOUSE DEAD STOCK BLUE 1000XXをヴィンテージと比較してみる (その1)

1 はじめに 



 2020年の秋に入って、ジェラードから新開発の生地"LAST RESORT"を使用した301XXが、ウエアハウスから新開発の生地"DEAD STOCK BLUE"を使用した1000XXが発売されました。

 ジェラード"LAST RESORT"は、デッドストックのリーバイスXXをの生地を分析してその結果を忠実に再現すべく製作されたとされています(ただし、メーカー公式のYOU TUBE動画では染めに関してはアレンジされていると説明されています。)。また、ウエアハウスは、元々ヴィンテージの再現をブランドコンセプトにしていますが、"DEAD STOCK BLUE"は、デッドストック状態での経年による酸化を再現すべく新たに開発した生地と説明されています。
 私自身は、これまで「ヴィンテージの再現」を謳って発売された日本のレプリカジーンズをいくつか購入して試したことがあるのですが、色落ちの印象はヴィンテージデニムに近いものが多いと思う反面、(1)色味と色の深さ、(2)スラブ感、(3)生地の質感、触感、着心地といった点で、ヴィンテージとは異なる方向性を持って作られているという印象を受けており、これらのレプリカはヴィンテージとは似て非なるものと捉えてきていました。また、そもそも日本のデニムが独自の評価を固めている中で、ヴィンテージを目指すことに意味があるのか?とも考えています。
 しかし、ここに来て上記のようなヴィンテージ志向の新商品が出たこともあり、また、新型コロナウイルスの流行で衣類の洗濯をまめにしなければならない中でヴィンテージデニムを気軽に着られないということもあり、久しぶりにヴィンテージ志向のレプリカデニムを試してみようかという気分になってきました。

 今回のブログでは、ジェラード301XXとウエアハウスの新1000XXをオリジナルヴィンテージと比較し、ヴィンテージの再現という点で日本のデニムがどこまで進化しているのか、私なりに見ていきたいと思います。

 今回の比較対象には、レザーパッチのリーバイス504ZXXとギャラ入り紙パッチのリーバイス504ZXXを用いました。前者は1953~54年辺り、後者は1955年ころの製造でないかと思われます。ジェラード301XXはおそらくこの辺りの時期をターゲットにしたものである一方、ウエアハウス1000XXはいわゆる1946年モデルをターゲットにしているのですが、残念ながら同時期のリーバイスのデッドストックは所有していないので、やむを得ないところです。ただし、色の濃い状態のでほぼ同時期の503BXXは所有しているので、ウエアハウス1000XXの糊を落としたときには、改めて比較してみようかと思います。

2 概観


 ヴィンテージ2本、レプリカ2本を並べてみた写真、表記サイズは、リーバイス504ZXXがいずれもW27・L34、ジェラード301XXがW28(レングス表記なし)、ウエアハウス1000XXがW28・L32です。



 次は、生地を比較した写真になります。今回はおまけとして、ヴィンテージ再現系のレプリカとしては定評のあるフリーホイーラーズ601XX(1947年モデル)の旧生地・新生地も並べています。いずれもまだ糊の付いた状態のものです。

 写真だとどうしても細かいニュアンスが出ないのですが、色味に関しては、ジェラード301XX、ウエアハウス1000XXのいずれもヴィンテージリーバイスに近い色合いが出せており、特にウエアハウス1000XXは、デッドストックの色味を再現に力を注いだのか、かなり近い色合いと言えます。あえて言えば、(1)ヴィンテージリーバイスと比べてジェラード301XXはやや赤みが強く、ウエアハウス1000XXもジェラード301XXほどではないが若干赤みが強い、(2)ヴィンテージリーバイスは少し乾いたような色合いであるがレプリカの2本はそれとは異なる、といった違いは挙げられます。しかし、個体差レベルと言ってもよいほどの差です。

 他方、写真では分からないことですが、生地の質感については、ウエアハウス1000XXは、ヴィンテージリーバイスと明らかに異なっていて、いかにもレプリカの生地だなという印象を強く受けました。一方で、ジェラード301XXの生地の質感は、ヴィンテージリーバイスと比べても、あまり違いを感じませんでした。

 ざっと見ていくと以上のとおりなのですが、次回から、ジェラード301XXとウエアハウス1000XXのそれぞれについて、もう少し深く比較していきたいと思います。

2020年7月17日金曜日

501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その3)

 前回、とはいってももはや2年近く前の記事ですが、ユースドの大戦モデルとその先後のモデルについて、重さと生地の厚さを測って、巷でよく言われている「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使用されている」という説を検証しました。
 結果としては、大戦デニムとその前後のモデルとの間に重さ、厚さに大きな差は見られず、「大戦モデル=ヘビーオンス」という説には疑問が残るという結論に至りました。
  ただ、前回の検証は、いずれも相当色落ちが進んだ個体で比較をしたため、それぞれの摩耗度が大きく異なることもあり得ましたので、大きな自信が持てるというものではなかったのは事実です。
 幸いなことに、前回の検証の後、かなり色の残った状態で大戦モデルやその先後のモデルを入手することができました。今回は、より新品に近い状態の個体を比較して、「大戦モデル=ヘビーオンス」という説を改めて検証をしてみようと思います。

1 検証するジーンズのサイズと状態

 まず、今回の検証で比較するジーンズのサイズと状態を確認しておきたいと思います。今回の検証で用いるのは、
(3)503BXX 片面タブモデル(初期型)
(4)503BXX 片面タブモデルの4本です。
 このうち、(3)と(4)は、私のホームページではまだ紹介していませんが、(3)はフロントボタンを縫い付けた生地の下端が切りっぱなしになっており、片面タブの初期型で、その中でもかなり初期のものと思われます。(4)はイエローステッチとオレンジステッチが混在しており、かつ、サイドステッチが長いことから、片面モデルの中期と思われるものです。

左から、(2)大戦モデル、(1)1937年モデル、(3)片面タブ(初期型)、(4)片面タブ(中期型)

下から、(2)大戦モデル、(1)1937年モデル、(3)片面タブ(初期型)、(4)片面タブ(中期型)

 次にそれぞれのサイズを表にまとめてみました。
モデルウエストレングス
(1)503XXB 1937年モデル70cm66cm
(2)S503XXB 大戦モデル72cm77cm
(3)503BXX 片面タブモデル(初期型) ※リペアあり67cm78cm
(4)503BXX 片面タブモデル(中期型) 67cm75.5cm
 大きさを見ると、ウエスト・レングスの両方で大戦モデルが大きくなっており、これと比較すると、1937年モデルや2本の片面タブモデルは、ウエスト・レングスのいずれかで大戦モデルに比べて小さくなっています。
 なお、比較に際しては、4本のうち(3)には穴を塞ぐリベアが多く入っていることを留意する必要があります。

2 重さの計測

 「501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その1)」でも述べていますが、大戦モデルの前後ではリーバイスは501XXに10オンスの生地を用いられており、他方で、「大戦モデル=ヘビーオンス」という説では大戦モデルには約20%重い12オンスの生地が使われていたと言われます。これが本当であれば、同サイズのジーンズで比較すれば、大戦モデルは約20%重く、厚いということになるはずです。

 それでは、それぞれの重さを測っていきましょう。

 まずは、大戦モデル。
643グラムでした。

 次に1937年モデル。
これは618グラム。

 最後に片面タブを2本続けて。
(3)の初期型は636グラム。

(4)の中期型は646グラム。

 まとめると次のとおり。大戦モデルを100としたときの他のモデルの比率も記しておきます。
 モデル 重量 比率
 (1)503XXB 1937年モデル 618g 96.1
 (2)S503XXB 大戦モデル 643g 100
 (3)503BXX 片面タブモデル(初期型) 636g 98.9
 (4)503BXX 片面タブモデル(中期型)  646g 100

 レングスが短い1937モデルがやや軽くなっていますが、それ以外はほとんど差がないと言ってよいでしょう。個体差や摩耗度の違いがあること考慮したとしても、到底、新品の状態で20%の重量の差があったとは考えられません。むしろこの結果からは、大戦モデルとその先後のモデルでは、生地の重さ(すなわちオンス数)には差がないと考えた方が自然です。そもそも、一番サイズが大きい大戦モデルが最も重くならなければならないはずですが、そうした結果にはなりませんでした。

2 厚さの計測

 大戦モデルの生地は肉厚だと言われることが多いので、今度は厚さを調べてみることにします。
 厚さの計測は、前回の「501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その2)」でも用いたデジタルノギスを用いています。計測方法も前回と同様にウエストベルトの5ヶ所を計測し、その平均値を取ることにしました。
 計測結果は、次のとおりとなりました。
 モデル 厚さ
 (1)503XXB 1937年モデル1.08mm
 (2)S503XXB 大戦モデル1.04mm
 (3)503BXX 片面タブモデル(初期型)1.09mm
 (4)503BXX 片面タブモデル(中期型) 1.17mm
 
 結果を見ると、大戦モデルとそれ以外で有意な差があるとは考えられません。むしろ、計測の結果は大戦モデルが一番薄かったのですが、これは計測箇所や計測時の力の入れ方でばらつきが出てしまうことの誤差の範囲と考えていただければと思います。

3 検証のまとめ

  このように重さと厚さについて、より新品に近い状態のもので検証してみましたが、結果的には、前回の検証と同様に、大戦モデルとその先後のモデルでは重さ(=オンス数)も厚さも有意な差は見られませんでした。今回は、相当に色が濃く残っているジーンズで検証ができましたので、結論として、大戦モデルにヘビーオンスの生地が用いられているわけではないと自信を持って言ってもよいのではないかと思われます。


 以上で検証は終わりなのですが、最後に、なぜ「大戦モデル=ヘビーオンス」と言われ続けたのか考えてみたいと思います。

 まず、「大戦モデル=ヘビーオンス」と言われるようになった端緒について、青田充弘氏著「501XXは誰が作ったのか? 語られなかったリーバイス・ヒストリー」(立東舎)では、エドクレイ著「リーバイス ー ブルージーンズの伝説」(草思社)の中の記述にあるのではないかと指摘されています。少し長いですが、その記述を箇所を引用しておきます。なお、青田氏の著書では「大戦モデル=ヘビーオンス」という説に疑問が呈されています。

「一つだけ会社が応じなかった変更があった。それはデニムの重量の引き下げだった。ニューヨーク買付け事務所の所長をしていたオスカー・グローブルは、逆にもっと重いデニムを認めてくれるようワシントンに陳情に行った。生地の重量を引下げることは、綿の節約になるように見えながら、ダブルXズボンの強さを低下させ、そして結局は、基幹産業の労働者達によって、すぐに穿きつぶされてしまうだろう。グローブルの説得は功を奏した。デニムの重さは、十三・五オンスにまで増大した。」(P93)

 また、日本のビンテージブームに大きな影響を与えた「BOON VINTAGE Volume.1 リーバイスの歴史が変わる」(祥伝社)でも、この記述が以下のように引き継がれています。

「その一方で政府との確執もあった。簡素化の一環としてデニムのオンスの引き下げを戦時生産局は突き付けたが。これに対しリーバイスは断固拒否。オンスダウンは耐久性を損なうとして、逆にデニムの重さを13.5オンスまで引き上げさせた。結果、より頑丈さを増した501は、さらに皆の求める商品へと進化していった。」(P48)

 こうした記述が原因で「大戦モデル=ヘビーオンス」という説が言われるようになったことは間違いないでしょう。そして、その後も、この説が特に検証されることなく、今日まで言われ続けてしまうこととなります。
 今回の4本のデニムは片面タブ以前の生地ですので、その後のものに比べて柔らかく感じられます。ただ、大戦モデル以外は柔らかい中にも生地のハリが強く感じられるのに対し、大戦モデルは若干ハリが弱く、表面の感触もフンワリしたものになっています。例えば、糸の撚りが大戦モデルではより甘くなっているといる可能性はあります。こうした質感、特に手触りの違いが人によっては生地が厚いと感じる一因になっている可能性はあるのかと思います。
 また、邪推かもしれませんか、「大戦モデル=ヘビーオンス」としておく方が、古着業界やレプリカ業界にとって都合がよかったということは言えるのではないかと思います。ちなみに、本家とも言うべきLVCは、大戦モデルの生地について、黒っぽい色味にするなどの特徴は再現していますが、ヘビーオンスにはしていません。当のリーバイスが著名なエドクレイの著書の記述に従っていないというのは、興味深いところです。

 以上、3回にわたって「大戦モデル=ヘビーオンス」説の検証を進めてきましたが、今回の検証によっても否定的な結果が得られました。疑問が解消されスッキリした反面、未だに「大戦モデル=ヘビーオンス」と言われ続けている現状を考えると複雑な気持ちにさせる結果でしたが、それでも自分の中での大戦モデルの魅力や価値が下がったというわけでは決してありません。
 ヴィンテージリーバイスのディテールについては、リーバイスにある資料などが掘り尽くされ、かなりの部分が調べ上げられています。しかし、生地については、リーバイス社ではなくコーンミルズ社について調査されないと分からない点がほとんどで、資料が乏しいといった理由から未だに解明されていない点が多いように思われます。現状でも、宣伝や雑誌記事などに見られる情報には眉唾のものも多々あるのは事実です。
 デニムについてもインターネットなどを通じて様々な情報が得られるようになっていますが、それらの情報を鵜呑みにすることなく、実際に自分で実物と向き合っていくことが重要なのだ、今回の検証はそんなことを改めて考えさせるものになりました。