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2022年4月3日日曜日

ヴィンテージリーバイスの生地のオンスの変遷

1 はじめに

 リーバイス501の生地のオンス数(重さ≒厚さ)については、1930年代前の"FOR OVER 50 YEARS"のギャランティーチケットまでは9オンス、1930年以後の"FOR OVER 60 YEARS"のギャランティーチケットからは10オンスと、それぞれギャランティーチケットに明記されており、片面タブ期の"FOR OVER 80 YEARS"のギャランティーチケットまでは10オンスの記載が続きました。その後の"FOR OVER 85 YEARS"のギャランティーチケットからは10オンスの記載がなくなりましたが、しばらくの間は生地のオンス数に変更はなく10オンスの生地が用いられ、後にオンス数の引上げが行われた、というのが一般的な理解ではないかと思われます。例えば、1960年代前半のものと思われるプリシュランクの生地のLEVI'S 554ZXXでは、フラッシャーに14オンスと明記されています。仮にこれが縮む生地で、縮率が10%とすると縮み前のオンスは11.34オンスと計算され、生地のオンス数は10オンスから引き上げられていることになります。

 ただ、「いつごろから」「どの程度まで」生地が重くなった・厚くなったということは、はっきりと語られることは少ないように思います。

 そこで、今回は、同じサイズのデッドストックを計測・比較して、リーバイス501の生地のオンスがいつ頃から変化しているのか、調べていきたいと思います。


2 対象とするジーンズ

 今回は、ウエスト27インチ・レングス34インチのもの6本と、ウエスト27インチ・レングス32インチのもの6本の計12本の重さと厚さを計測します。具体的には、以下のとおりで、古いと考えられるものから並べています。番号の後に★が付いているものはレングス34インチ、☆が付いているものはレングス32インチです。おおよそ1950年代前中期から1980年代前半までの30年間の生地を比較することになります。一部フラッシャーやギャランティーチケットが欠品しているものがありますが、微小な差かと思われるため、ここではその差は無視することにします。


(1) 革パッチの504ZXX(サイドステッチが長い)★
(2) 革パッチの504ZXX(サイドステッチが短い)★
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX(オイルドクロスのギャランティーチケット)★
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX(紙のギャランティーチケット)☆
(7) 501 BIG E ウエストチェーン(タイプもの)☆
(8) 501 BIG E ウエストチェーン(大文字 501)☆
(10) 501 66後期★ ※ホームページ未公開
(11) 501 クロカン(1982年2月製)★
(12) 501 クロカン(1982年11月製)★

レングス34インチの6本

レングス32インチの6本

 レングス34インチ・32インチの各6本をそれぞれ並べてみましたが、レングスのサイズの個体差は、さほど感じられないのがお分かりいただけると思います。


3 重さの計測

 それでは、実際に12本のジーンズの重さを計測していきます。まず、レングス34インチのもの(上掲の★印)の6本から。


(1) 革パッチの504ZXX 704g

(2) 革パッチの504ZXX 671g

(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX 677g

(10) 501 66後期 655g

(11) 501 クロカン 658g

(12) 501 クロカン 666g

 次に、レングス32インチのもの(上掲の☆印)の6本を。


(9) 501 66前期 636g


 以上の結果をまとめると次のようになります。


27/34  27/32
(1) 革パッチの504ZXX  704g
(2) 革パッチの504ZXX  671g
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX  677g
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX   652g
(5) ギャラ無し紙パッチの503BXX   632g
(6) 501 BIG E ウエストシングル     619g
(7) 501 BIG E ウエストチェーン   649g
(8) 501 BIG E ウエストチェーン      635g
(9) 501 66前期   636g
(10) 501 66後期  655g
(11) 501 クロカン  658g
(12) 501 クロカン  666g

 レングス34のものと32のものは、同じ尺度で比較したいところです。そこで、同じギャラ入り紙パッチの504ZXXである(3)と(4)は同じ時代の生地が用いられていると仮定してこれらを100とし、レングス34インチのものは(3)と、レングス32のものは(4)と対比して数値化してみます。その結果は、次のようになります。

(1) 革パッチの504ZXX       104.0
(2) 革パッチの504ZXX        99.1
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX   100
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX   100
(5) ギャラ無し紙パッチの503BXX   96.9
(6) 501 BIG E ウエストシングル   94.9
(7) 501 BIG E ウエストチェーン   99.5
(8) 501 BIG E ウエストチェーン   97.4
(9) 501 66前期           97.5
(10) 501 66後期           96.8
(11) 501 クロカン           97.2
(12) 501 クロカン           98.4

 以上を見てみると、重さについては、生地のオンス数が上がり重くなったという傾向は見られません。むしろ、全体としては、古い時代のものの方がやや重い傾向にあります。これは、古いものの方が太めのシルエットであるため使用している生地が多いと理解が適当かと思います。


4 厚さの計測

 次に厚さの計測をしていきます。計測は、以前に大戦モデルの厚さを計測したときと同様に、電子ノギスを使用してウエストベルトの5ヶ所(左右前、左右横、真後ろ)を計測し、その平均値をとることにします。

                                                  右前    左前   右横    左横    後ろ  平均値
(1) 革パッチの504ZXX       1.14   1.03   1.01   1.04   1.03  1.05  
(2) 革パッチの504ZXX       1.04   1.02   0.99   1.10   1.02  1.034
(3) ギャラ入り紙パッチの504ZXX  0.95   1.03   1.06   0.96   1.01  1.002 
(4) ギャラ入り紙パッチの504ZXX  0.99   0.96   0.94   1.00   1.01  0.98   
(5) ギャラ無し紙パッチの503BXX  1.04   1.05   1.03   0.96   1.00  1.016  
(6) 501 BIG E ウエストシングル    1.07   0.99   1.08   0.99   1.01  1.028 
(7) 501 BIG E ウエストチェーン    1.01   0.97   1.02   1.09   1.01  1.02
(8) 501 BIG E ウエストチェーン    0.98   0.96   1.04   1.03   1.00  1.002
(9) 501 66前期            0.99   0.92   0.90   0.89   0.94  0.928
(10) 501 66後期          0.91   0.95   0.95   0.90   0.87  0.916
(11) 501 クロカン          0.91   0.96   0.92   0.91   0.96  0.932
(12) 501 クロカン          0.95   0.93   0.95   0.98   0.91  0.944
                                  (単位mm)

 平均値を見ると、最大で0.916~1.05、約10%の差が見られますが、年代が進むに連れて厚くなるのではなく、(9)の66前期以降は1mmを超えるものがなくなるなど、むしろ薄くなっていく傾向が見られます。年代が進むに連れて、糸や織りのムラが小さくなったことが影響しているのかもしれません。


5 まとめ

 重さと厚さの両面から検証していきましたが、1950年代前中期から1980年代前半までの30年間では、XXからBIG Eの移行期も、リング糸から空紡糸に変わった時期も、革新織機に変わり生地の耳がなくなった時期も、少なくとも生地の重さ・厚さに関する仕様は変わっていないと考えられます(年代が立つに連れ、重さも厚さも数字が小さくなるのは、前述のとおり、製品のシルエットの変更や生地の均質化が影響していると思われます。)。

 以前ブロクでとりあげた大戦モデルの生地の比較については、元々、世間で言われる「大戦モデル=ヘビーオンス」という見方に否定的でしたので、予想どおりの(あるいは予想以上の)結果が出たという感想でした。しかし、今回は、前述のとおりプリシュランク生地の製品のフラッシャーに"14oz"と明記されていることもあり、501の生地も1960年代辺りから変化が出てくるだろうと予想していたので、今回の結果は個人的には意外でした。

 今回の結果との整合的に理解しようとすると、そもそもオンス数の表記がいい加減なものだったか、オンスという単位そのものに何らかの変更があったとしか考えられないのですが、どちらもそれを証明するような証拠を見つけているわけではありません。

 ただ、いずれにしろ生地自体の重さ・厚さは変わっていなことは間違いありません。XXの生地は薄くてペラペラしているといったことが言われることもありますが、数字で見る限りはそんな事は言えず、最初に述べたような一般的な理解からくるバイアスがかかったものと言えるでしょう。何事にも検証が必要ということを改めて実感しました。

2020年7月17日金曜日

501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その3)

 前回、とはいってももはや2年近く前の記事ですが、ユースドの大戦モデルとその先後のモデルについて、重さと生地の厚さを測って、巷でよく言われている「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使用されている」という説を検証しました。
 結果としては、大戦デニムとその前後のモデルとの間に重さ、厚さに大きな差は見られず、「大戦モデル=ヘビーオンス」という説には疑問が残るという結論に至りました。
  ただ、前回の検証は、いずれも相当色落ちが進んだ個体で比較をしたため、それぞれの摩耗度が大きく異なることもあり得ましたので、大きな自信が持てるというものではなかったのは事実です。
 幸いなことに、前回の検証の後、かなり色の残った状態で大戦モデルやその先後のモデルを入手することができました。今回は、より新品に近い状態の個体を比較して、「大戦モデル=ヘビーオンス」という説を改めて検証をしてみようと思います。

1 検証するジーンズのサイズと状態

 まず、今回の検証で比較するジーンズのサイズと状態を確認しておきたいと思います。今回の検証で用いるのは、
(3)503BXX 片面タブモデル(初期型)
(4)503BXX 片面タブモデルの4本です。
 このうち、(3)と(4)は、私のホームページではまだ紹介していませんが、(3)はフロントボタンを縫い付けた生地の下端が切りっぱなしになっており、片面タブの初期型で、その中でもかなり初期のものと思われます。(4)はイエローステッチとオレンジステッチが混在しており、かつ、サイドステッチが長いことから、片面モデルの中期と思われるものです。

左から、(2)大戦モデル、(1)1937年モデル、(3)片面タブ(初期型)、(4)片面タブ(中期型)

下から、(2)大戦モデル、(1)1937年モデル、(3)片面タブ(初期型)、(4)片面タブ(中期型)

 次にそれぞれのサイズを表にまとめてみました。
モデルウエストレングス
(1)503XXB 1937年モデル70cm66cm
(2)S503XXB 大戦モデル72cm77cm
(3)503BXX 片面タブモデル(初期型) ※リペアあり67cm78cm
(4)503BXX 片面タブモデル(中期型) 67cm75.5cm
 大きさを見ると、ウエスト・レングスの両方で大戦モデルが大きくなっており、これと比較すると、1937年モデルや2本の片面タブモデルは、ウエスト・レングスのいずれかで大戦モデルに比べて小さくなっています。
 なお、比較に際しては、4本のうち(3)には穴を塞ぐリベアが多く入っていることを留意する必要があります。

2 重さの計測

 「501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その1)」でも述べていますが、大戦モデルの前後ではリーバイスは501XXに10オンスの生地を用いられており、他方で、「大戦モデル=ヘビーオンス」という説では大戦モデルには約20%重い12オンスの生地が使われていたと言われます。これが本当であれば、同サイズのジーンズで比較すれば、大戦モデルは約20%重く、厚いということになるはずです。

 それでは、それぞれの重さを測っていきましょう。

 まずは、大戦モデル。
643グラムでした。

 次に1937年モデル。
これは618グラム。

 最後に片面タブを2本続けて。
(3)の初期型は636グラム。

(4)の中期型は646グラム。

 まとめると次のとおり。大戦モデルを100としたときの他のモデルの比率も記しておきます。
 モデル 重量 比率
 (1)503XXB 1937年モデル 618g 96.1
 (2)S503XXB 大戦モデル 643g 100
 (3)503BXX 片面タブモデル(初期型) 636g 98.9
 (4)503BXX 片面タブモデル(中期型)  646g 100

 レングスが短い1937モデルがやや軽くなっていますが、それ以外はほとんど差がないと言ってよいでしょう。個体差や摩耗度の違いがあること考慮したとしても、到底、新品の状態で20%の重量の差があったとは考えられません。むしろこの結果からは、大戦モデルとその先後のモデルでは、生地の重さ(すなわちオンス数)には差がないと考えた方が自然です。そもそも、一番サイズが大きい大戦モデルが最も重くならなければならないはずですが、そうした結果にはなりませんでした。

2 厚さの計測

 大戦モデルの生地は肉厚だと言われることが多いので、今度は厚さを調べてみることにします。
 厚さの計測は、前回の「501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その2)」でも用いたデジタルノギスを用いています。計測方法も前回と同様にウエストベルトの5ヶ所を計測し、その平均値を取ることにしました。
 計測結果は、次のとおりとなりました。
 モデル 厚さ
 (1)503XXB 1937年モデル1.08mm
 (2)S503XXB 大戦モデル1.04mm
 (3)503BXX 片面タブモデル(初期型)1.09mm
 (4)503BXX 片面タブモデル(中期型) 1.17mm
 
 結果を見ると、大戦モデルとそれ以外で有意な差があるとは考えられません。むしろ、計測の結果は大戦モデルが一番薄かったのですが、これは計測箇所や計測時の力の入れ方でばらつきが出てしまうことの誤差の範囲と考えていただければと思います。

3 検証のまとめ

  このように重さと厚さについて、より新品に近い状態のもので検証してみましたが、結果的には、前回の検証と同様に、大戦モデルとその先後のモデルでは重さ(=オンス数)も厚さも有意な差は見られませんでした。今回は、相当に色が濃く残っているジーンズで検証ができましたので、結論として、大戦モデルにヘビーオンスの生地が用いられているわけではないと自信を持って言ってもよいのではないかと思われます。


 以上で検証は終わりなのですが、最後に、なぜ「大戦モデル=ヘビーオンス」と言われ続けたのか考えてみたいと思います。

 まず、「大戦モデル=ヘビーオンス」と言われるようになった端緒について、青田充弘氏著「501XXは誰が作ったのか? 語られなかったリーバイス・ヒストリー」(立東舎)では、エドクレイ著「リーバイス ー ブルージーンズの伝説」(草思社)の中の記述にあるのではないかと指摘されています。少し長いですが、その記述を箇所を引用しておきます。なお、青田氏の著書では「大戦モデル=ヘビーオンス」という説に疑問が呈されています。

「一つだけ会社が応じなかった変更があった。それはデニムの重量の引き下げだった。ニューヨーク買付け事務所の所長をしていたオスカー・グローブルは、逆にもっと重いデニムを認めてくれるようワシントンに陳情に行った。生地の重量を引下げることは、綿の節約になるように見えながら、ダブルXズボンの強さを低下させ、そして結局は、基幹産業の労働者達によって、すぐに穿きつぶされてしまうだろう。グローブルの説得は功を奏した。デニムの重さは、十三・五オンスにまで増大した。」(P93)

 また、日本のビンテージブームに大きな影響を与えた「BOON VINTAGE Volume.1 リーバイスの歴史が変わる」(祥伝社)でも、この記述が以下のように引き継がれています。

「その一方で政府との確執もあった。簡素化の一環としてデニムのオンスの引き下げを戦時生産局は突き付けたが。これに対しリーバイスは断固拒否。オンスダウンは耐久性を損なうとして、逆にデニムの重さを13.5オンスまで引き上げさせた。結果、より頑丈さを増した501は、さらに皆の求める商品へと進化していった。」(P48)

 こうした記述が原因で「大戦モデル=ヘビーオンス」という説が言われるようになったことは間違いないでしょう。そして、その後も、この説が特に検証されることなく、今日まで言われ続けてしまうこととなります。
 今回の4本のデニムは片面タブ以前の生地ですので、その後のものに比べて柔らかく感じられます。ただ、大戦モデル以外は柔らかい中にも生地のハリが強く感じられるのに対し、大戦モデルは若干ハリが弱く、表面の感触もフンワリしたものになっています。例えば、糸の撚りが大戦モデルではより甘くなっているといる可能性はあります。こうした質感、特に手触りの違いが人によっては生地が厚いと感じる一因になっている可能性はあるのかと思います。
 また、邪推かもしれませんか、「大戦モデル=ヘビーオンス」としておく方が、古着業界やレプリカ業界にとって都合がよかったということは言えるのではないかと思います。ちなみに、本家とも言うべきLVCは、大戦モデルの生地について、黒っぽい色味にするなどの特徴は再現していますが、ヘビーオンスにはしていません。当のリーバイスが著名なエドクレイの著書の記述に従っていないというのは、興味深いところです。

 以上、3回にわたって「大戦モデル=ヘビーオンス」説の検証を進めてきましたが、今回の検証によっても否定的な結果が得られました。疑問が解消されスッキリした反面、未だに「大戦モデル=ヘビーオンス」と言われ続けている現状を考えると複雑な気持ちにさせる結果でしたが、それでも自分の中での大戦モデルの魅力や価値が下がったというわけでは決してありません。
 ヴィンテージリーバイスのディテールについては、リーバイスにある資料などが掘り尽くされ、かなりの部分が調べ上げられています。しかし、生地については、リーバイス社ではなくコーンミルズ社について調査されないと分からない点がほとんどで、資料が乏しいといった理由から未だに解明されていない点が多いように思われます。現状でも、宣伝や雑誌記事などに見られる情報には眉唾のものも多々あるのは事実です。
 デニムについてもインターネットなどを通じて様々な情報が得られるようになっていますが、それらの情報を鵜呑みにすることなく、実際に自分で実物と向き合っていくことが重要なのだ、今回の検証はそんなことを改めて考えさせるものになりました。

2018年10月20日土曜日

501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その2)

 前回は、「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われている」という説について、生地の重さの観点から検証したところ、実際には、この説が疑わしいと思えるような結果が出てしまいました。
 そこで、今回は、生地の厚さから検証を行っていきたいと思います。生地のオンスは、1平方ヤード辺りの"重さ"ですので必ずしも厚さに比例するものでないことは前置きしておきます。

3 厚さの計測

生地の厚さといっても、実際にはごく薄いものですので、普通に定規で測れるものではありません。そこで、今回は「デジタルノギス」なるものを使って計測していきます。これを用いると、薄いものでも0.01mm単位まで計測することができるため、薄い生地の厚さも測ることができます。

デジタルノギス
普通のノギスと同じように先端で挟んで計測します。


 計測は、ウエストベルトの5ヶ所(左右前、左右横、真後ろ)を計測し、その平均値をとることにします。ウエストベルトの端は、生地が二つ折りになっているので、実際の生地の厚さは計測値の半分ということになります。なお、ウエストベルトの上端にはステッチがかけられていますが、厚さを測る際には、ステッチ分の厚さまで余分に計測されてしまうのでステッチを避けて縫い穴の上を計測するようにしました。逆に、生地が荒れている部分は、生地が本来の厚さから相当程度摩耗して薄くなってしまっているため計測箇所から外すようにしました。
 また、力の入れ具合で計測値がかなり変わってしまうため、一番低い(=薄い)数字が出るまでできるだけ力を入れて計測することにしました。計測値は、指で生地をギュッとつまんだ状態の値と考えていただければよいかと思います。
 その他、ノギスと生地との角度によってかなり計測値が変わるため、ノギスと生地が垂直に交わるよう心がけて計測しました。
 計測に用いたのは、重さの計測のときと同じく(1)1922年モデル(後期型)(2)1937年モデル(3)大戦モデル(1本目)(4) 大戦モデル(2本目)(5)片面ダブモデル(初期型)(6)片面タブモデル(後期型)(7)ギャラ無紙パッチモデルの7本のボトムズに加え、(8)506XX(1937年1stモデル)(9)506XX(大戦期1stモデル)(10)506XX(1947年1stモデル)(11)507XX(2ndモデル)の4着のジャケットも加えています。ジャケットもウエストベルト部分をジーンズと同様に計測しました。
 全部で11着のボトムズ、ジャケットを計測した結果は、以下のとおりです(単位はmm)。なお、前述のように二つ折りの部分を計測したため、実際の生地の厚さは理論上はこの半分ということになります。

モデル厚さ
(平均値)
左前左横真後ろ右横右前
(1)503BXX 1922年モデル後期型1.0060.9811.070.981
(2)503BXX 1937年モデル1.0721.121.051.081.071.04
(3)S501XX(S503BXX?) 大戦モデル(その1)1.0761.120.991.111.11.06
(4)S501XX(S503BXX?) 大戦モデル(その2)1.0941.121.031.111.081.13
(5)503BXX 片面タブモデル(初期型)1.0841.091.091.081.061.1
(6)503BXX 片面タブモデル(後期型)1.111.121.071.131.131.1
(7)504ZXX(ギャラ無紙パッチ)1.091.091.081.091.111.08







(8)506XX(1937年モデル)1.0841.071.031.11.081.14
(9)S506XX(大戦モデル)1.0521.061.031.041.071.06
(10)506XX(1947年モデル)1.0981.111.121.091.071.1
(11)507XX1.1321.081.161.121.141.16

-->  結果としては、(3)の大戦モデルが1.076mm、(4)の大戦モデルが1.094mm、(9)の大戦モデルが1.052mmですが、その前後の時代のものでも、1.006~1.132mmの範囲内に収まっています。「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われている」という説では、大戦モデルには12オンスの生地(大戦期以外は10オンス)が用いられているとされることが多いので、この場合、生地の厚さも20%前後の差が出てもおかしくないと思いますが、実際には、(4)の大戦期とその前の(2)1937年モデルでも2%程度の差しか出ていませんし、ジャケットに至っては大戦期の生地が最も薄いという結果が出ています。生地の摩耗の度合はそれぞれ異なり、また、そもそも100分の1ミリ単位での計測ですので、計測誤差は相当に出ることは前提とする必要がありますが、「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われている」という説を立証するような結果は、厚さを測っても出てきませんでした。上記の結果を見るに、計測誤差、元々の生地の厚さの微妙な個体差、生地の状態の差といった差が数字に出てきただけのようにも思われます。

4 まとめ

2回にわたって大戦モデルの生地を重さ・厚さという観点から検証して見ましたが、「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われている」という結論からは遠い結果が出てしまったように思います。ただし、この検証も私の手持ちのジーンズ2本とジャケット1着で行っただけのものであることは留意していただきたいと思います。
 個人的には、この説に疑念を抱いていたので、ひと通り検証をしてみてスッキリした気分です。そもそもヘビーオンスであれば良いというものではないですし、大戦モデルの魅力は黒みがかかった色味や、味のある(=雑な)縫製、無骨なディテールなどにあると思いますので、この結果にガッカリすることなく、これからも大事に穿いていきたいと思います。

2018年10月13日土曜日

501XX大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われているのか?(その1)

 ヴィンテージの501XXの中でも、第2次世界大戦中に生産された「大戦モデル」は、大変人気が高いものになっています。
 第2次世界大戦中、ジーンズに使われる部材も物資節約のため削減が求められ、リーバイスは、コインポケットのリベットやクロッチリベット(股リベット)の省略、シンチバックの廃止などに応じました。しかし、その一方で、これらの物資の削減と引換えに製品の丈夫さを担保するため、リーバイスはよりヘビーオンスの生地に変更したという説が言われることがあります。
 私もこの説は以前から知っていたので、初めて大戦モデルを手にしたときは、なんとなく厚手の生地が用いられているような感覚を持っていたのですが、時が経つにつれ「あまり変わらないな」という印象が強くなってきました。
 そんなところに、2018年3月に発行された青田充弘氏の「501XXは誰が作ったのか? 語られなかったリーバイス・ヒストリー」(立東舎)でも同様の疑念が呈されているのを見ました。これを読んで「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われている」という説に対する私の中の疑問は深まっていました。

 そこで、今回は、2回に分けて、「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われている」という説について、生地の(1)重さと(2)厚さの点から、実際に検証をしていきたいと思います。

 大戦モデルの前後では、リーバイスは501XXに10オンス(縮率10%として縮み後で約11.2オンス)の生地を用いており、このことは、当時のギャランティーチケットや販促用のカタログの記述から疑いのないものになっています。他方で、「大戦モデルにはヘビーオンスの生地が使われている」という説では、大戦モデルでは12オンス(縮率10%として縮み後で13.5オンス)の生地が使われていたといわれることが多いようです。これが本当だとすれば、ジーンズも約20%重く、そして厚いという有意な差が出てくることになるはずです。
 私の持っているジーンズのサイズに差がありますので正確な比較ができるわけではありませんが、生地の重さで20%の違いがあるとすれば、サイズの違いがあったとしても、相当な重量差が出てくるはずです。

 1 検証するジーンズのサイズと状態

今回検証対象にするのは、501XX、503BXX、504ZXXの(1)1922年モデル(後期型)(2)1937年モデル(3)大戦モデル(1本目)(4) 大戦モデル(2本目)(5)片面ダブモデル(初期型)(6)片面タブモデル(後期型)(7)ギャラ無紙パッチモデルの7本になります。大戦モデルはデッドストックの物を持っていないため、比較対象はすべてユースドのものにしています。デッドストックにすれば、計測対象となるジーンズの状態がすべて同じという点は良いのですが、糊の量によって重さ・厚さに誤差がでるという欠点もあるので、計測対象をデッドストックにするかユースドにするかは一長一短かと思います。

 検証するジーンズのサイズを表にまとめると次のとおりになります。
モデルウエストレングス
(1)503BXX 1922年モデル後期型71cm73cm
(2)503BXX 1937年モデル68cm70cm
(3)501XX(503BXX?) 大戦モデル(その1)68cm69cm
(4)501XX(503BXX?) 大戦モデル(その2)73cm84.5cm
(5)503BXX 片面タブモデル(初期型)69cm80cm
(6)503BXX 片面タブモデル(後期型)66cm78cm
(7)504ZXX(ギャラ無紙パッチ)68cm71cm

 また、状態ですが、(6)片面タブは色が強く残っている(=生地の摩耗がまだ少ない)一方で、(2)1937年モデルは状態が悪く10%程度の色残りです。他は約30~60%程度の色残りと言えるかと思います。色残り(=生地の摩耗の度合い)も重さや厚さには影響することは付言しておきます。

2 重さの計測

(1)大戦モデルの測定

大戦モデルとそれ以外を比較する前に、(3)と(4)の大戦モデルの重量を測っておきたいと思います。

(3)大戦モデル(その1)


(4)大戦モデル(その2)

  (3)と(4)ではウエストで5cm(約7%)、レングスで11.5cm(約22%)の差がありますので、重量にも相当の差が出ると思われるところ、(3)は603g、(4)は675g、約12%の差となりました。脚よりも胴の部分の方がより生地を多く使っていることからすれば、レングスで約22%の差が重量だと約12%になっているということからして、(3)と(4)の2本の大戦モデルの間では、生地の重さには差はないと考えられます。

(2)戦前のモデルの測定

(1)1922年モデル(後期型)、(2)1937年モデルは、いずれも小さめのサイズなので、(3)の大戦モデルと比較してみることにします。

 (1)1922年モデル(後期型)と(3)大戦モデルのサイズの差は、ウエストで約4%、レングスで約5.5%で、(1)の方が若干大きくなります。(3)の大戦モデルの方が生地の重さ(オンス)が20%重いとすれば、理論的にはサイズの差を考慮しても20%近く重くなるはずです。
(1)1922年モデル
そこで、(1)を測ってみると618gと、(3)の大戦モデル(603g)とほぼ同じ(むしろ1922年モデルが2%重い)という結果が出てしまいました。サイズの差のほかバックルの有無という細かい要素を考慮したとしても、重さの点で両者の生地の間にはほとんど差がないと考えたほうが自然ではないかと思います。

 次の(2)の1937年モデルですが、(3)の大戦モデルと比べるとウエスト・レングスともサイズはほぼ同じと言っていいと思います。
 
(2)1937年モデル
  そこで(2)を測ったところ、重さは656gとなってしまい、(3)の大戦モデル(603g)よりも約9%重いという結果が出てしまいました。(2)はバックシンチが残っているほかリペアが施されている箇所が多くリペアの部材が影響していたかもしれませんが、少なくとも大戦モデルの方が高オンス(=より重い)生地が使われているという説からはかなり遠い結果になってしまったように思います。

(3)戦後のモデルの測定

次に、戦後のモデルを測定して、大戦モデルと比較したいと思います。

 (5)は戦後の比較的早い時期のものと思われる片面タブモデルで、レングスなどが長めであることから、(4)の大戦モデルと比較していきます。
 (5)と(4)のサイズの差はウエスト・レングスいずれも約5.5%程度(4)の大戦モデルの方が大きくなります。生地で20%の重さがあるとすれば20%以上の重さの差が出てくることになります。
(5)片面タブモデル(初期型)
  測定結果は640gで、(4)の大戦モデル(675g)と比べる約5.5%の差となり、ほぼサイズ差に一致する結果となりました。やはり、生地の重さに大きな違いがあるとは到底考えにくい結果です。

 (6)は、1950年台に入ってからと思われる片面タブモデルで、(4)の大戦モデルと比べると、ウエストで約10.5%、レングスで約8.5%の差があり、重さでは20%強の差が出ても良いはずです。
(6)片面タブモデル(後期型)
  重さは629gで、(4)の大戦モデルとの差は約7.5%と、やはりサイズの差程度の重量差しかありませんでした。片面タブの後期型と比べても、大戦モデルの生地が重いという結果は見えてきません。

 しつこいようですが、念のため1960年代に入ってからのギャラ無し紙バッチのものとも比べています。
(7)ギャラ無し紙パッチ
  サイズが(3)の大戦モデルとほぼ同じなので(3)と比べてみると、(7)は613g、(3)は603gと1%強の重量差しか出てきませんでした。

 次の表は、以上の測定結果をまとめたものです。


モデル重さウエストレングス
(1)503BXX 1922年モデル後期型618g71cm73cm
(2)503BXX 1937年モデル656g68cm70cm
(3)501XX(503BXX?) 大戦モデル(その1)603g68cm69cm
(4)501XX(503BXX?) 大戦モデル(その2)675g73cm84.5cm
(5)503BXX 片面タブモデル(初期型)640g69cm80cm
(6)503BXX 片面タブモデル(後期型)629g66cm78cm
(7)504ZXX(ギャラ無紙パッチ)613g68cm71cm

  デニムにおけるオンスすなわち1ヤード辺りの重さ(オンス)ということで重さを測ってみたのですが、ジーンズの状態の違いなどを考慮したとしても、「大戦モデルは他の時代のものに比べてヘビーオンスの生地が使われている」という説からはかなり遠い結果が出てしまったように思います(正直に言ってここまではっきりとした結果が出るとは意外でした。)。

 ただ、重さは同じでも厚さの感じ方は、結構異なってくるものです。次回は、大戦モデルと他の時代で生地の厚さに違いがあるのか、見ていきたいと思います。

2018年9月15日土曜日

リーバイス ーヴィンテージから現在のものまでの色の変遷ー(その3)

 今回は前回に引き続いてオールド・レギュラーと呼ばれる赤耳モデル以降のリーバイス501の生地の色について見ていきます。
革パッチ期からの11本のリーバイス501
条件を同じにするためスキャナで撮った生地の画像

5 赤耳

左が革パッチの504ZXX、右が赤耳
本来なら66前期モデルの次は66後期モデルを取り上げたいのですが、66後期は水通しをしたと思われるものしか持っていないため飛ばして、赤耳モデルを見ていきたいと思います。
 赤耳モデルでは、xxやBIG Eで見られた色の深みも無くなっています。また、かなり色がくすんだようになり66モデルで見られた青の鮮やかさがほとんど感じられなくなります。また、全体的に毛羽立ちがやや強くなっていることにより、色が褪せた印象が更に増したように思います。
 1970年台以降、アメリカの繊維産業は当時台頭してきた日本製の繊維製品などの輸入拡大により厳しい競争を強いられるようになり、生産コスト削減や一層の効率化を求められるようになります。こうした中で、1970年台終わりから1980年台初めあたりの時期にコーンミルズ社でもデニム生地で使用する糸をリング糸からよりコストの安い空紡糸に変更しており、赤耳モデル以降、生地の毛羽立ちが特に目立つようになってきます。硫化染料の使用とともに、リング糸変更も色の変化に影響を与えたと言えるでしょう。

6 80's・90'S

左が革パッチの504ZXX、右が1980年代製
左が革パッチの504ZXX、右が1990年代製
  1980年代製・1990年代製のものを見比べると、ほとんど生地に違いがみられません。
 XXやBIG Eなどと比べるとあまり色の深みは感じられません。また、赤耳モデルと比べるとやや青っぽくなっています。また、毛羽立ちが赤耳モデルよりも更に強くなり、全体的に白い層に包まれているような印象です。
 この頃のジーンズの対を成すものとしてヴィンテージデニムブームが起きましたが、色や色落ちとして見た場合には改めて対極にあるものだと思います。その後、世の中のジーンズが多かれ少なかれヴィンテージ調のもので占められるようになってから、1980~90年代のジーンズのリバイバルが起きているのは、ファッションの面白さを顕著に表しているように思われます。

7 00501-01


左が革パッチの504ZXX、右が00501-01


 00501-01は、2003年のリーバイスのアメリカ国内工場の廃止以後に登場した日本企画のモデル。生地はXX17と呼ばれるもので、「1917年当時の糸の作り方・織り方を最新の技術で忠実に再現した」と謳われています。ヴィンテージブームが広がりを見せた結果、1990年代終わりごろから、501の生地もそれまでの空紡糸の使ったものからリング糸を使ったものに回帰しており、以後、日本企画のレギュラー501向けにコーンミルズ社からヴィンテージ調の生地がリリースされますが、XX17はその口火を切ったものです。
 生地の色ですが、XXやBIG Eなどのヴィンテージのものとは異なり、特に強い深みは感じられず、青を重ねたというよりも、黒又はグレーに見えて青みがあまり感じられません。また、生地が徹底的に毛焼きされているのかほとんど毛羽立ちが感じられず、色の面でもあっさりとした印象を受けます。ちなみに、色落ちをさせたものも見たことがあるのですが、未洗いでの印象と大きく異なり表情豊かな生地に見えました。

8 501-1995


左が革パッチの504ZXX、右が501-1995
501-1995は、コーンデニム社のホワイトオーク工場で製造された生地を用いて、アメリカ国内の委託工場で製造された"MADE IN U.S.A."を売りにしたモデルで、アメリカで発売されていたモデルです。
 00501-01ではあまり青みが感じられないと書きましたが、501-1995は、ヴィンテージ期のような深いインディゴの色になっています。上の写真にある革パッチの501の色と比べるとやや青みが強くなっています。


9 501-2546

左が革パッチの504ZXX、右が501-2546
501-2546も501-1995と同じくコーンデニム・ホワイトオーク工場製の生地を用いた"MADE IN U.S.A."のモデルです。こちらは日本でも発売され、比較的大きく展開されているように思われます。
 501-2546は、501-1995と同様にインディゴの色の深さが感じられますが、501-1995よりも更に青みが強くなっています。他のものとの比較でいえば、66前期の色に近く、それをもう少し深くしたような色味です。
 501-1995と501-2546は、未洗いの状態では、スラブ感などはさほど強くないのですが、ヴィンテージジーンズが好きな私でも穿き込んでみたいと思わせられる生地感になっています。


 以上、3回に分けて、未洗いの状態でのデニム生地の色を見比べていきましたが、ヴィンテージとよばれる時代のものには、さほど大きな差が見られなかった反面、1980年代から90年台までにかけてのものは、染料の変化や生地に用いる糸の変化により、未洗い時でも大きく色が変わっていくことを確認することができました。また、ここでとりあげた最近になってからの501は、ヴィンテージらしさを意識したような色合いに戻っているように思われます(縫製の細かな仕様もヴィンテージ時代のものに戻されたりしています)。
 未洗いの状態を見るだけで、そのデニム色や色落ちを語るのは極めて難しいことは承知で見比べてみたのですが、実際に、横に並べてみてみるとその時代のデニムの色の特徴は、未洗いの状態でも垣間見ることができたように思えます。今度は、リーやラングラーなども見ていきたいと思います。