2018年9月15日土曜日

リーバイス ーヴィンテージから現在のものまでの色の変遷ー(その3)

 今回は前回に引き続いてオールド・レギュラーと呼ばれる赤耳モデル以降のリーバイス501の生地の色について見ていきます。
革パッチ期からの11本のリーバイス501
条件を同じにするためスキャナで撮った生地の画像

5 赤耳

左が革パッチの504ZXX、右が赤耳
本来なら66前期モデルの次は66後期モデルを取り上げたいのですが、66後期は水通しをしたと思われるものしか持っていないため飛ばして、赤耳モデルを見ていきたいと思います。
 赤耳モデルでは、xxやBIG Eで見られた色の深みも無くなっています。また、かなり色がくすんだようになり66モデルで見られた青の鮮やかさがほとんど感じられなくなります。また、全体的に毛羽立ちがやや強くなっていることにより、色が褪せた印象が更に増したように思います。
 1970年台以降、アメリカの繊維産業は当時台頭してきた日本製の繊維製品などの輸入拡大により厳しい競争を強いられるようになり、生産コスト削減や一層の効率化を求められるようになります。こうした中で、1970年台終わりから1980年台初めあたりの時期にコーンミルズ社でもデニム生地で使用する糸をリング糸からよりコストの安い空紡糸に変更しており、赤耳モデル以降、生地の毛羽立ちが特に目立つようになってきます。硫化染料の使用とともに、リング糸変更も色の変化に影響を与えたと言えるでしょう。

6 80's・90'S

左が革パッチの504ZXX、右が1980年代製
左が革パッチの504ZXX、右が1990年代製
  1980年代製・1990年代製のものを見比べると、ほとんど生地に違いがみられません。
 XXやBIG Eなどと比べるとあまり色の深みは感じられません。また、赤耳モデルと比べるとやや青っぽくなっています。また、毛羽立ちが赤耳モデルよりも更に強くなり、全体的に白い層に包まれているような印象です。
 この頃のジーンズの対を成すものとしてヴィンテージデニムブームが起きましたが、色や色落ちとして見た場合には改めて対極にあるものだと思います。その後、世の中のジーンズが多かれ少なかれヴィンテージ調のもので占められるようになってから、1980~90年代のジーンズのリバイバルが起きているのは、ファッションの面白さを顕著に表しているように思われます。

7 00501-01


左が革パッチの504ZXX、右が00501-01


 00501-01は、2003年のリーバイスのアメリカ国内工場の廃止以後に登場した日本企画のモデル。生地はXX17と呼ばれるもので、「1917年当時の糸の作り方・織り方を最新の技術で忠実に再現した」と謳われています。ヴィンテージブームが広がりを見せた結果、1990年代終わりごろから、501の生地もそれまでの空紡糸の使ったものからリング糸を使ったものに回帰しており、以後、日本企画のレギュラー501向けにコーンミルズ社からヴィンテージ調の生地がリリースされますが、XX17はその口火を切ったものです。
 生地の色ですが、XXやBIG Eなどのヴィンテージのものとは異なり、特に強い深みは感じられず、青を重ねたというよりも、黒又はグレーに見えて青みがあまり感じられません。また、生地が徹底的に毛焼きされているのかほとんど毛羽立ちが感じられず、色の面でもあっさりとした印象を受けます。ちなみに、色落ちをさせたものも見たことがあるのですが、未洗いでの印象と大きく異なり表情豊かな生地に見えました。

8 501-1995


左が革パッチの504ZXX、右が501-1995
501-1995は、コーンデニム社のホワイトオーク工場で製造された生地を用いて、アメリカ国内の委託工場で製造された"MADE IN U.S.A."を売りにしたモデルで、アメリカで発売されていたモデルです。
 00501-01ではあまり青みが感じられないと書きましたが、501-1995は、ヴィンテージ期のような深いインディゴの色になっています。上の写真にある革パッチの501の色と比べるとやや青みが強くなっています。


9 501-2546

左が革パッチの504ZXX、右が501-2546
501-2546も501-1995と同じくコーンデニム・ホワイトオーク工場製の生地を用いた"MADE IN U.S.A."のモデルです。こちらは日本でも発売され、比較的大きく展開されているように思われます。
 501-2546は、501-1995と同様にインディゴの色の深さが感じられますが、501-1995よりも更に青みが強くなっています。他のものとの比較でいえば、66前期の色に近く、それをもう少し深くしたような色味です。
 501-1995と501-2546は、未洗いの状態では、スラブ感などはさほど強くないのですが、ヴィンテージジーンズが好きな私でも穿き込んでみたいと思わせられる生地感になっています。


 以上、3回に分けて、未洗いの状態でのデニム生地の色を見比べていきましたが、ヴィンテージとよばれる時代のものには、さほど大きな差が見られなかった反面、1980年代から90年台までにかけてのものは、染料の変化や生地に用いる糸の変化により、未洗い時でも大きく色が変わっていくことを確認することができました。また、ここでとりあげた最近になってからの501は、ヴィンテージらしさを意識したような色合いに戻っているように思われます(縫製の細かな仕様もヴィンテージ時代のものに戻されたりしています)。
 未洗いの状態を見るだけで、そのデニム色や色落ちを語るのは極めて難しいことは承知で見比べてみたのですが、実際に、横に並べてみてみるとその時代のデニムの色の特徴は、未洗いの状態でも垣間見ることができたように思えます。今度は、リーやラングラーなども見ていきたいと思います。

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