2018年9月1日土曜日

リーバイス ーヴィンテージから現在のものまでの色の変遷ー(その1)

ヴィンテージデニムの生地の魅力について語られるとき、縦落ちや粒落ちといった色落ちが言われることが多いですが、色そのものの魅力が語られることも多いように思われます。
 デニム生地は、石油製品である合成インディゴにより染色されますが、1970年代には、石油ショックにより合成インディコの供給を確保することが厳しくなる一方で、ジーンズをはじめとするデニム衣類の需要は増加の一途をたどり合成インディゴの需要は増加。合成インディゴの供給減、需要増という、デニムの生産者にとって厳しい状況となりました。こうした状況の中、リーバイスへの生地の供給元であったコーンミルズ社でも、1970年代に、コストが安価な硫化染料であらかじめ経糸を染めて合成インディコの使用量の低減を図る「下染め」が行われるようになり、これによって、ヴィンテージデニムの愛好家からは、色の深みや鮮やかな青みがなくなったなどと言われるようになります。
 そもそも色は好みによる部分も大きく、まして色や色落ちでヴィンテージデニムと対をなすと言える1980年代や90年代のデニムが人気になっています。コストダウンが理由とはいえ上記の変化の先後で品質が良くなった・悪くなったとは一概には言えませんが、ここでは、品質の高低という問題は抜きにして、デッドストックのリーバイスを基にその色の変遷を見ていきたいと思います。

 今回検証に用いるのは、次の未洗いの状態のリーバイスのジーンズ11本です。同じ条件での比較をすることが困難なため、ここではデッドストックのみに絞ります。ただ、未洗い時の色が同じであっても、色落ちをさせるとデニムの色は大きく変わります(例えば、ヴィンテージレプリカでは、未洗い時の色はヴィンテージを再現できているものも多いものの、色落ち後の色を再現できているものはほとんどないと感じる方も多いと思います。)。
 また、ヴィンテージジーンズでも、例えばリーバイスとラングラーでは大きく色合いが異なりますが、あまりに比較対象を広げると収拾がつかなくなるので、ここでは非防縮生地を用いたリーバイスのジーンズに絞っています。なお、デッドストックといえども経年変化により糊や生地の酸化の具合などが異なると考えられ、そうした要素が色合いの検証に大きな影響を与えうる可能性があることは付言しておく必要があるかと思います。
1 LEVI'S 504ZXX (革パッチ)
2 LEVI'S 504ZXX (ギャラ入紙パッチ)
3 LEVI'S 503BXX (ギャラ無紙パッチ)
4 LEVI'S 501 (BIG E)
5 Levi's 501 (66前期)
6 Levi's 501 (赤耳)
7 Levi's 501 (80's (1982年11月製))
8 Levi's 501 (90's (1996年11月製))
9 Levi's 501 (00501-01 (2005年7月製)
10 Levi's 501 (501-1995 (2016年製(推定)))
11 Levi's 501 (501-2546 (2017年製(推定)))
 なお、1から11まではおおよそ製造時期の順に並べていますが、1と2については製造時期の先後が判然としないところがあります。
左から右に行くに従い、新しくなっていく

生地のアップ。条件を同じにするためスキャナで画像を撮った。

 全体的にいうと、1の革パッチから4のBIG Eまではよく言われる「深いインディゴの色合い」を見ることができます。色落ちが進むと青の鮮やかさや赤みの強さは異なってきますので、デッドストックの状態でももう少し差があるのではないかと予想していたのですが、5以降の生地との差と比べると大きくは変わらないといった印象です。
  5の66前期は鮮やかな青みが非常に特徴的で、BIG Eまでのものとは大きく異なります。上の画像でもとても分かりやすく出ていると思います。1970年代から90年代までは、最初に述べた硫化染料による下染めが採用されていた時期のものになりますが、確かによく言われるように色の深みが落ちています。
 9以降は、ヴィンテージやオールドではなくレギュラーと呼ばれる年代のものになりますが、この頃になると、空紡糸ではなく再びリング糸が用いられるようになっています。最近製造された10の501-1995や11の501-2546は、コーンデニム社のホワイトオーク工場製の生地を使用していることを売りの一つにしていますが、未洗い時の色は1~4のXX期やBIG E期の色に近いものになっています。

 以上、ざっと見ていったのですが、これまで横並びで比較をしたことがなかったので、 改めて時代ごとのデニムの色の特徴の一端を垣間見ることができたように思われます。次回は、1の革パッチのジーンズを基準としながら、それぞれの生地についてもう少し丁寧に見ていきます。